秋の実りの季節に

みなさんこんにちは。9月といえば、やはり「お彼岸」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。秋分の日を中心に前後3日間を合わせた1週間が「秋のお彼岸」と呼ばれます。ちなみに、春分の日を中心にした1週間は「春のお彼岸」です。年に二度あるわけですが、特に秋のお彼岸は、秋の実りの季節とも重なり、自然やご先祖さまへの感謝をあらためて意識する時期でもあります。

「彼岸」という言葉には、「煩悩や迷いの世界=此岸(しがん)」に対して、「悟りの世界=彼岸」という意味があります。仏教の教えでは、修行を積むことで此岸から彼岸へと渡ることができるとされており、春分と秋分は太陽が真東から昇り真西に沈むことから、西方浄土への道がまっすぐに通じる特別な日と考えられてきました。そのため、古くから日本ではこの時期に先祖供養を行う習慣が根づいたのです。

現代では、お墓参りに行き、ご先祖さまや亡くなった家族のことを想う方が多いでしょう。お供え物として有名なのが「おはぎ」です。もち米をつぶして丸め、小豆あんで包んだ素朴なお菓子ですが、小豆の赤色には邪気を払う力があると信じられてきました。家庭ごとに味付けや作り方に違いがあるのも、日本らしい温かさを感じるところです。

私自身も、子どものころは両親に連れられてお墓参りに行き、線香の香りをかぎながら手を合わせた記憶があります。当時は「なぜこの時期に行くのだろう?」と深く考えることはありませんでしたが、大人になった今では、ご先祖さまがあってこその自分の命だと実感するようになりました。普段の生活の中では忘れがちなことを思い出させてくれるのが、この「お彼岸」なのかもしれません。

お彼岸は決して堅苦しい行事ではなく、家族で集まって食卓を囲みながら故人を思い出す、そんな穏やかな時間を過ごすのも立派な供養です。今年の秋のお彼岸には、少し足を延ばしてお墓参りに行ったり、手作りのおはぎを味わったりしてみてはいかがでしょうか。忙しい毎日の中に、心を落ち着けるひとときを与えてくれるはずです。